『我逢人』(がほうじん)

「火事になったら包丁を井戸に投げ込め!」

昔、富山の包丁職人さんに付いて仕事をさせていただいた時に、そう教えられました。

あまりにも印象深い話しだったので今でも時折思い出します。

昔から包丁職人の作業場には井戸と凄い勢いで火が燃えている炉があるそうです。

この火と水を巧みに操り硬い鉄を思いのままに形作り、鍛えて丈夫で切れ味のいい包丁に仕上げていくわけです。

そんな作業場では火事になる事もあるそうで

そんな時は火消しが、威勢良く消すのかと思いきや

昔の火消しは、火を消すなんてコトは無いんですね。

燃えてる建物を壊して燃え広がらないようにするのが消化活動なんだそうです。

火事になったら包丁職人は黙って見ているわけではなく

作業場にある包丁を全て井戸に投げ込むのだそうです。

なんで???

って思うじゃ無いですか

理由は、鍛え上げた包丁が火事の熱で「焼戻し」(簡単に言うと熱が加わり、焼き鍛えた包丁がもろくなるんだそうです)してしまう事を防ぐ為だそうです。

この話しを聞いた時、井戸の中でキラキラと光る無数の包丁を想像して

なんだか神秘的な印象を持ったことを今でも覚えいます。


そんな包丁職人さんがこんな禅語を教えてくれました。

『我逢人』(がほうじん)

人と会うことからすべてが始まる。
人と人との出逢いの尊さを表した言葉です。

曰く
どんな人に会う時でも、初めて会う人は、自分の経験したコトの無い事を教えてくれるかもしれ無い。
若いとか、偉い人とか関係無いんだ
その人は間違いなく師匠と呼ぶにふさわしいとの事

昔この事を聞いた時は

「なんの事?」とか思ってましたが
今はよくわかります。

「今の自分があるのはあの人のおかげ」

僕にはそう思える人が何人もいます。

「人生は人との出逢いで作られる」

だから、大切にしたいと思います。


一つ一つの出逢いを

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